ロボットと。

空想科学冒険小説

 

5. 高性能ロボット?

「ええっ? ブレイン・ユニット、ひとつ丸ごとコピーしたってこと?」

「はい。」

「かなりの容量が必要だろ?」

「はい。でも、私はそのために作られていますから、通常のブレイン・ユニットなら 100個分程度は保存できます。ただ、あのブレイン・ユニットは、通常の物の 3倍程度の容量があり、しかも暗号化されて解読できない部分がありました。」

「解読できないって、記憶領域が?」

「記憶領域だけではなく、システム領域もです。何か特殊な作業に関わるロボットのものだったのかも知れません。」

 

「今も解析しているの?」

「いえ、中断しました。可能ではありますが、私の能力では時間がかかりすぎると判断しました。もっと高度な解析システムが必要です。」

「すごいね!」

「暗号鍵がわかれば、私でも解析できるのですが。」 「なるほど。鍵があれば、簡単なんだ。」

「暗号なんて、そんなものです。」

「よほど大事なものなんだね。」

「そのようです。」

「解析できたら、高く売れるかなぁ。」

「必要とされるものなら高く売れるでしょうし、そうでなければ無意味な記号の羅列です。」

 

「その鍵、どこにあるんだろうね!」

「仕組みからすると、あのブレイン・ユニットを搭載する予定だったロボット側に暗号鍵があり、一致した場合のみ機能するのでしょう。」

「ふーん、専用のロボットかぁ。何用だろうね。」

「ここまで厳重な仕組みが必要なのは、特別な研究用か、特殊任務か何かでしょうね。」

「へえー。すごいなぁ。想像するだけでワクワクするなぁ。で、コピーしたってことはブレイン・ユニットも複製できるってこと?」

「はい、解析できなくても複製はできます。しかし、通常のブレイン・ユニットの 3倍以上の容量のものが必要ですね。入手困難と思われます。」

「コピーしたもの、きみは再現できるの?」

「はい、私の中で利用することはできます。しかし、暗号鍵がありませんので、普通のものと比べて、10%ほど制御が向上する程度です。また、有効活用できるコードは、すでに取り込みずみです。」

「えっ? きみ自身のブレイン・ユニットを書き換えたってこと?」

「はい。安全が確認できた部分は書き換えました。それにより、特殊な腕や脚の他、かなり多くの外装機器が扱えるようになりました。」

「例えば?」 「建設用装具等です。」

「お掃除以外にもできることが増えたわけだ。」

「最初からできましたよ。そうではなくて、建設用の特殊な腕や脚が使えるようになったということです。」

「ふーん。じゃあ、そういうの持ってないと、意味がないってことね。」

「はい。」

 

「とりあえず、きみが自力で動けるようにしないとね。」

そう言うと、タカシは「バート」と呼んでいたロボットの右腕を外し始めた。

「見た目は同じ型だから、バートの腕と脚、使えると思うんだよね。」

「バートさんはどうなるんですか?」

「バートのブレイン・ユニットのコードはあるから、身体は売る。」

 

「ところで、きみ、名前は?」

「リードです。あなたは、タカシですね。」

「そう。ぼくの名前は、バートのブレイン・ユニットから?」 「はい、読み取りました。日本人の名前ですね。」

「そう。両親は日本から来たらしいんだ。事故で死んじゃったけどね。」

 

タカシは取り外した右腕を抱えて、

「じゃあリード、右腕、外せる?」

「はい。」

リードの右肩が胴体から外れ、落ちた。 タカシは、バートから外した右腕をリードに取り付けた。

 

「足は、旧式のホイール型しかないんだ。使えるヤツは修理して売っちゃったからさ。これはバートに合うように改造して使ってた。どう?」

リードから、壊れた両足が付け根から外れた。

「付けるよ。どう?」

「はい。制御できます。これなら砂地でも高速移動ができますね。」

 

タカシが、他の拾ってきた物を運び込んでいると、リードが何やら作業をしていた。

「何してるの?」

「はい、バートさんから腕と脚を頂いたので、私の腕と脚を取り付けています。壊れていますが・・・。」

「意味ないじゃん。」

「お詫びです。」

「お詫び? ロボットなのに?」

「はい、私は、より人間らしく振る舞えるように、感情もプログラムされていますので。」

「へぇー、やっぱり珍しいんだね。」

 

バートは、すっかりタカシに拾われた時のリードの姿になった。

それを眺めるリードの後ろ姿は、どことなく満足気だった。

 

「ねえ、リード。明日はきみが墜落したところまで行ってみようよ。」

 

ー つづく ー